外岡勝彦のBluegrass講座「ブルーグラス音楽とは」

カントリーミュージックとブルーグラス

カントリーというと多くの人はカウボーイを連想すると思いますが、それはあくまでもハリウッド映画が作り上げた「西部劇」の影響であって、本来のカントリーミュージックとはそれほど深い関係にはなく、そのルーツはかつてアメリカ南東部のアパラチヤ山系に入植したイギリスのスコットランド人やアイルランド人達が祖国から持ち込んだ民俗音楽なのです。

通常ではブルーグラスも含めて一緒にカントリーという言い方が一般的ですが、ブルーグラスはカントリーに比べより伝統民謡的な部分を保ち続けて発展し、1940年代にビル・モンローというミュージシャンが一つの音楽ジャンルとして確立しました。

それに対し、カントリーは様々な音楽を取り入れて大衆音楽化し、変化し続けているタイプのもので、1947年にレコードデビューしたハンク・ウィリアムスによって爆発的に広がりました。

 

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カントリーとブルーグラスでは使用する楽器にも違いがあり、ブルーグラスは5弦バンジョー、マンドリン、フィドル(バイオリン)、ギター、ベースがオーソドックスな編成で、何れの楽器もアコースティック(電気による音の増幅をしない)が基本です。 一方カントリーではバンジョー、マンドリンに変わってペダル・スティールギター、エレキギターといった電気楽器が主役で他にはドラムが、時にはピアノも入り近年のロックと変わらない編成となっています。

 

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1500年代後半からヨーロッパ諸国からアメリカへの開拓・植民が始まりましたが、彼等が故郷のイギリスやアイルランドから携えてきた文化や民謡は口伝えによって人々にそして子孫に受け継がれていき、やがてその音楽は後にマウンテンミュージック、オールドタイムミュージック或いはヒルビリーと呼ばれるようになりました。このアパラチヤの閉鎖的な地域の音楽に変化を与える大きな契機が訪れるのはレコードやラジオの普及です。1877年にエジソンが蓄音器を発明しレコードを発明。1906年(M39年)にマサチューセッツでラジオ放送が開始、1920年(T9年)ペンシルベニヤで一般向けのラジオ放送が開始されてからこの普及によってアパラチヤの音楽は南部以外の都市部でも聴かれるようになり、やがて北米全土にその存在が知られるようになったのです。それ以降のカントリー(正確にはこの時点ではまだカントリーとは呼ばれていませんが)はレコード会社、映画会社、出版会社等の商業目的として一つの産業(ビジネス)へと変化していきました。

 

年代別ヒストリー

1925年(M45年)テネシー州ナッシュビルのラジオ局WSMが「グランドオールオープリー」というカントリーウエスタンショウを毎週土曜日の夜に全米ネットで放送開始。

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1927年(S2年)カントリーのパイオニア、ミシシッピー州出身のジミー・ロジャースとバージニヤ洲出身のカーター・ファミリーが最初のレコード録音をおこなう。

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1938年(S13年)ケンタッキー州出身のビル・モンローがブルーグラスボーイズを結成、従来のマウンテンミュージックをよりドライブ感を強調した独自の「ブルーグラスミュージックとして確立、商業ベースにのせる。・・・ビル・モンローのバンド名がブルーグラスボーイズといったこと、彼の出身地がブルーグラスステイトと呼ばれたことからこの音楽スタイルをブルーグラスと呼んだといわれている・・・

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1947年(S22年)アラバマ州出身のハンク・ウイリアムスがレコードデビュー、一躍スターとなりカントリーという音楽スタイルを全米に広げる。・・・1940年代後半にカントリーという名称が登場した。その名称が一般化したのは更に後年になる・・・

1955年(S29年)エルビス・プレスリーの登場。ミシシッピー州生まれのエルビスはカントリー出身の歌手で、黒人のリズム&ブルースとハンク・ウイリアムスに代表される白人カントリーを融合させてロカビリー(ロックンロール)という新しい音楽ジャンルを世界中に知らしめる。

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1958年(S33年)ウディ・ガスリー、ピート・シーガー、ウィーヴァーズらの活動を序章としたアメリカン・フォーク・リバイバルフォーク・ブームが起こり、キングストントリオの「の大ヒットで60年代に大きく花開く。こうしてみるようにカントリーミュージックのルーツは古いものの、コマーシャルベースに乗ってからはまだ70年あまりの新しい音楽でもあります。アメリカの現代音楽の源流がカントリーミュージックにあることを知れば日本でも、もっとカントリーが、ブルーグラスが聴かれるようになればいいのにと思うばかりです。

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